2024年7月2日
KAORIです。
今から17~18年前のお話。
私は俳優の西島秀俊さんに恋をしていた。
ストイックなところと知的な雰囲気が好きだった。
今のようにテレビドラマやメジャーな映画にあまり出ていない頃で、その姿を頻繁にお見かけすることはなかった。
西島さんが出てるマイナーな映画を観たくて、単館上映をしているミニシアターを巡った。
寝ても覚めても西島さんのことを考えていた。
ちょうどその頃、私は子供の学校のPTA役員をしていた。
七夕の季節に教室に笹飾りを飾ることになり、役員達で短冊つくりをした。
「お母さんも一枚願い事を書いてもいいですよ」と言われた。
他のお母さん達は皆、我が子の健康や学業についての願い事を書いていた。
私は「西島さんに会いたい」とこっそり書いた。
それから約1か月後、西島さん出演のドラマのロケが近隣の町であることを知った。
そこは千早赤阪村だった。本きもの松葉に入社する前のことなのでそちら方面はまるで知らない所だった。
ロケに際してエキストラを募集していた。
私は迷うことなく応募した。
そして落ちた。
諦めきれない私は、当日現場に行った。
仕事を休み友達を誘って。
ロケは運動会のシーンを撮るために、村の廃校で行われるとのことだった。
初めて来た土地で私達は道に迷った。
その頃はまだ携帯電話はガラケーで、ナビもなかった。
必死で捜し歩き、通りすがりの男性に
「この辺でドラマのロケをやっている廃校を知りませんか?」と尋ねた。
すると男性は「僕スタッフです。」と言った。
私は大喜びで、エキストラに応募したけど落ちたこと、西島さんを大好きなことを興奮気味に話した。
男性は「よかったら参加して下さい。」と現場まで連れて行ってくれた。
そこには光り輝く西島さんがいた。
深い森で出会った野生のシカのように神秘的で、私の目は釘付けになった。
ロケは小学校の運動会という設定で、私達は子供を応援する保護者役だった。
すぐそこに憧れの西島さんがいる。
演技なんてどうでもよかった。
ひとしきり撮影をして休憩時間になった。
友達が「あっ!西島さん一人で座ってる! 行っておいで!」と言った。
「えー でも・・・」とグズグズしていたら「早く!」と
背中をドンと押された。
おそるおそる西島さんに近づき「握手して下さい・・」と手を出すと、躊躇なく握ってくれた。
「がんばってください」と言うのがやっとだった。
まっすぐな瞳をこちらに向けて「ありがとうございます」と魅力的な声。
私は彼の声が特に好きだったのだ。
もう死んでもいいと思った。
その後も撮影をし、とうとう終わりになった。
校舎に入っていく西島さんを見つけた友達が
「西島さ~ん 写真一緒に撮らせて下さ~い」と叫びながら、私の手を引っ張り駆け寄って行った。
「いいですよ」と、それぞれツーショットでの写真撮影に応じてくれた。
今思い返しても素敵な出来事だった。
西島さんは静かで優しく、とても感じがよかった。
友達は最高に頼もしかった。
私は最低なほどにふがいなかった。
でも幸せだった。
その出来事に大満足した私の西島さん熱は、すっかり落ち着いた。
後日ドラマの放送日、テレビの画面にはジーンズを履いた私の後ろ姿が一瞬映し出された。
そのでっかい尻に「ギャアッ!」となった。
七夕には願い事を書こう。
きっと叶う。